1942

1942年(昭和17年) 

・(1月20日)ラインハルト・ハイドリヒの監督下、ナチス政権の高官15人が、ヴァンゼー会議で「ユダヤ人問題の最終解決策(ラインハルト作戦)」を策定(独ソ戦の行き詰まりで当初思い描いていたユダヤ人の東方追放は難しくなり、東欧各地のゲットーのユダヤ人の処遇に困り、その結果、ゲットーを解体し、そこで暮らすユダヤ人を移送し虐殺する事に)
 3大絶滅収容所(ベウジェツ、ソビボル、トレブリンカの強制収容所)を建設 多くのユダヤ人、ほぼ全ての同性愛者、身体障害者、スラブ人、政治犯、エホバの証人(その後、ロマも)を系統的に虐殺する計画の完全な履行を再確認した この大量虐殺はホロコースト、ヘブライ語ではショアー(Shoah)と呼ばれる また、アインザッツグルッペン(特別行動部隊)による(銃殺)犠牲者は独ソ戦で140万人、ゲットーでは70万人 ナチス政権下のユダヤ人犠牲者総数は500万人から600万人とされる
・ロマ絶滅政策は「ポライモス(ロマ語の複数の方言で「絶滅」「破壊」の意)」と呼ばれ犠牲者は30万~50万人とされる ポライモスやホロコーストでは、人体実験が大規模に行われた 関わった医師の内、アウシュヴィッツ強制収容所に勤めたヨーゼフ・メンゲレが最も悪名高い
・ナチスにより強制収容所では収容ユダヤ人による「ゾンダーコマンド(特殊部隊)」が組織される 主な仕事はガス室などで殺された同胞・ユダヤ人の死体処理 自殺をする以外にこの仕事を辞める、または拒否する方法はなかった 彼らもまた虐殺された
*関連映画「アウシュウイッツの女囚」(ワンダ・ヤクボフスカ1948)、「夜と霧」(アラン・レネ1955)、「かくも長き不在」(アンリ・コルピ1961)、「質屋」(シドニー・ルメット1964)、「パサジェルカ」(アンジェイ・ムンク1963)、「愛の嵐」(リリアーナ・カヴァー二1974)、「ジェノサイド ナチスの虐殺 ホロコーストの真実」(アーノルド・シュワルツマン1981)、「ソフィーの選択」(アラン・J・パクラ1982)、「遠い日の家族」(クロード・ルルーシュ1985)、「ショアー」「ソビブル、1943年10月14日午後4時」「不正義の果て」(クロード・ランズマン1985.2001.2013)、「さよなら子供たち」(ルイ・マル1987)、「生きるために」(ロバート・M・ヤング 1989)、「シンドラーのリスト」(スティーブン・スピルバーグ1993)、「ライフ・イズ・ビューティフル」(ロベルト・ベニーニ1997)、「ベント 堕ちた饗宴」(ショーン・マサイアス1997)、「灰の記憶」(ティム・ブレイク・ネルソン2001)、「謀議」(フランク・ピアソン2001)、「ホロコースト アドルフ・ヒトラーの洗礼」(コンスタンタン・コスタ・ガヴラス2002)、「ローゼンシュトラッセ」(マルガレーテ・フォン・トロッタ2003)、「フェイトレス ~運命ではなく~」(ラヨシュ・コルタイ2005)、「ヒトラーの贋札」(ステファン・ルツォヴィッキー2006)、「アウシュビッツ行 最終列車」(ダーナ・ヴァヴロヴァヨゼフ・フィルスマイアー2006)、「縞模様のパジャマの少年」(マーク・ハーマン2008)、「愛を読むひと」(スティーブン・ダルドリー2008)、「ミケランジェロの暗号」(ウォルフガング・ムルンバーガー2010)、「ナチスの犬」(ルドルフ・ヴァン・デン・ベルフ2012)、「サウルの息子」(ラースロー・ネメシュ2014)、「手紙は憶えている」(アトム・エゴヤン2015)、「否定と肯定」(ミック・ジャクソン2016)、「ブルーム・オブ・イエスタディ」(クリス・クラウス2016)、「ジョジョ・ラビット」(タイカ・ワイティティ2019)、「アウシュヴィッツ・レポート」(ペテル・べブヤク2020)、「アウシュヴィッツの生還者」(バリー・レヴィンソン2021)、「関心領域」(ジョナサン・グレイザー2023)

・(2月19日)ルーズベルト大統領「大統領令9066号」発令「保護」の名目で、西海岸地方に住む日系人全員およびハワイの日系人のうち主だった人々計約12万人米を国全土の11か所の「転住センター」(強制収容所)に強制収容
 いくつかの収容所では、管理体制への不満からストライキが頻発 1942年12月のマンザナー暴動、1944年5月のツールレイク射殺事件などが発生 カナダでも同様の強制収容が確認されている
*題材映画「山河燃ゆ」(山崎豊子の「二つの祖国」を基にしたNHK大河ドラマ1984)、「愛と哀しみの旅路」(アラン・パーカー1990)、「ミリキタニの猫」(リンダ・ハッテンドーフ2006)、「アメリカンパスタイム」(デズモンド・ナカノ2007)、「99年の愛~JAPANESE AMERICANS~」(TVドラマ2010)、「アリージャンス/忠誠」(スタフォード・アリマ2016)

・(2月24日)ボイス・オブ・アメリカ(Voice of America 略称:VOA)米国政府の戦争情報局の下で設立され放送を開始
・(2月25日)日本海軍の艦載機による空襲が行われたと誤認したアメリカ陸軍が、対空砲火等の“迎撃戦”を展開した(ロサンゼルスの闘い)
*題材映画「1941」(スティーブン・スピルバーグ1979)
・(4月01日)日本放送協会、南太平洋の米兵向け放送「ゼロ・アワー」開始 アナウンサー嬢は米兵から「東京ローズ」と呼ばれる

・(3月23日)100年前(1842年)のこの日、仏の小説家 スタンダール(59)、死す
*原作映画「パルムの僧院」(クリスチャン・ジャック1948)、「赤と黒」(クロード・オータン=ララ1954)、「ヴァニナ・ヴァニニ」(ロベルト・ロッセリーニ1961)、「スタンダールの恋愛論」(ジャン・オーレル1965)他

・(2月14日)「シンガポール アレクサンドラ病院事件」日本軍 赤十字旗を掲げる英軍医療隊の軍医将校・看護兵、負傷者ら200人以上を殺害
・(2月16日)オランダ領東インド(インドネシア)のバンカ島 日本軍に降伏した約60名の英豪軍と21名の豪州陸軍看護婦(強姦後 所説あり)を虐殺「バンカ島事件」
・1942年 オランダ領東インド(インドネシア)のアンボン島で「日本軍による連合軍捕虜虐殺」
*題材映画「アンボンで何が裁かれたか」(スティーヴン・ウォレス1990)
・(4月09日)日本軍、フィリピンのバターン半島攻略 約7万6千名もの米比軍が捕虜に 収容所に移送するが「バターン死の行進」多くの犠牲者を出す
・(1945年1月00日)マレーシア・サンダカン捕虜収容所にて、日本軍によるオーストラリア、英軍捕虜の死の行進 捕虜約1000人と日本軍数百人死亡(サンダカン死の行進)

・(4月24日)「赤毛のアン」で知られるカナダの作家 L・M・モンゴメリ(67)、死す
*原作映画「赤毛のアン」「続・赤毛のアン/アンの青春」「赤毛のアン 新たな始まり」(ケヴィン・サリヴァン1986.1988.2008)、「赤毛のアン/アンの結婚」(ステファン・スケイニ2000)、「赤毛のアン」(ジョン・ケント・ハリソン2016 )

・第21回衆議院議員総選挙(翼賛選挙)では翼賛政治体制協議会(翼協)が結成され、466人(定員と同数)の候補者を推薦し、全議席の81.8%にあたる381人が当選(4月30日)東条英機は、全マスメディアを支配し露骨な選挙干渉
・(5月11日)詩人 萩原朔太郎(55)、死す 大正時代に近代詩の新しい地平を拓き「日本近代詩の父」と称される 代表作「月に吠える」(1917年)、「青猫」(1923年)、「純情小曲集」(1925年)、 「氷島」(1926年)
・(5月27日)ナチス国家保安本部長官で「ユダヤ人問題の最終的解決」を遂行するラインハルト・ハイドリヒ、英とチェコスロバキア駐英亡命政府の手により暗殺される(エンスラポイド作戦)
・(6月10日)ハイドリヒ暗殺に怒り狂ったヒットラーが報復 チェコのリディツェ村の虐殺、破壊 チェコのレジャーキ村の虐殺、破壊(6月24日)
*題材映画「死刑執行人もまた死す」(フリッツ・ラング1943)、「ヒットラーの狂人」(ダグラス・サーク1943)、「抵抗のプラハ」(ウラジミール・シェッフ1974)、「暁の7人」(ルイス・ギルバート1975)、「HHhH プラハ 1942年」(セドリック・ジメネス2016)、「ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦」(ショーン・エリス2016)
・(5月29日)歌人・反戦思想家 与謝野晶子(63)、死す「髪五尺ときなば水にやはらかき少女ごころは秘めて放たじ」「柔肌の熱き血潮に触れもみで悲しからずや道を説く君」「君死にたまふことなかれ」1921年、夫鉄幹と共に文化学院創設
*題材映画「華の乱」(深作欣二1988)
・(6月05日)日本軍、ミッドウェイ海戦で大敗北(日本機動部隊全滅)「大本営発表」で国民に嘘の発表
*題材映画「ミッドウェイ海戦」(ジョン・フォード1942)、「ミッドウェイ」(ジャック・スマイト1976)

・(7月16日)ナチによるユダヤ人大量検挙 ヴィシー政権が仏警察を動員して実行 検挙者13152人 後に絶滅収容所に送られた(ヴェロドローム・ティヴェール大量検挙事件)
・(8月06日)ヤヌシュ・コルチャック(コルチャック先生)、ナシュ・ドム(ポーランド人孤児院)、ドム・シェロット(ユダヤ人孤児院)の子供たちとトレブリンカ強制収容所(抹殺キャンプ)に送られ虐殺される
*題材映画「パリの灯は遠く」(ジョセフ・ロージー1976)、「コルチャック先生」(アンジェイ・ワイダ1990)「黄色い星の子供たち」(ロズリーヌ・ボッシュ2010)、「サラの鍵」(ジル・パケ・ブルネ2010)、「沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家」(ジョナタン・ヤクボウィッツ2020)

・(8月23日)近代日本画の先駆者 竹内栖鳳(77)、死す  終始官展にとどまり在野の横山大観と画壇の双璧をなし「西の栖鳳、東の大観」と

・(11月16日)米、原爆製造計画「マンハッタン計画」に着手 科学者たちのリーダー ロバート・オッペンハイマーの提案で研究所をニューメキシコ州ロスアラモス(後のロスアラモス国立研究所)に置かれることが決定
*題材映画「デイワン~衝撃・悪夢の選択」(ジョセフ・サージェント1989)、「シャドー・メーカーズ」(ローランド・ジョヒィ1990)、「オッペンハイマー」(クリストファー・ノーラン2023)

・(11月28日)米ボストンのナイトクラブ「ココナッツ・グローヴ」で火災事故 488人死亡 死因の多くは火災時の有毒ガスによる窒息死
・米にてOSS(戦略事務局)が改組設立される その後、CIG(中央情報グループ)及びOPC(政策調整局)を経て1947年にCIA(中央情報局)誕生 世界各地で諜報・謀略活動を行う

・イタリア・ネオレアリズモ運動の先駆け作、発表 以降1954年まで続く
•「雲の中の散歩」(アレッサンドロ・ブラゼッティ)
•「郵便配達は二度ベルを鳴らす」「揺れる大地」「夏の嵐」(ルキノ・ヴィスコンティ)
•「靴みがき」「自転車泥棒」「ミラノの奇跡」「ウンベルトD」(ヴィットリア・デ・シーカ)
•「無防備都市」「戦火のかなた」「殺人カメラ」「ドイツ零年」(ロベルト・ロッセリーニ)
•「荒野の抱擁」「にがい米」(ジョセッペ・デ・サンティス)
•「ポー河の水車小屋」(アルベルト・ラトゥアーダ)
•「ある恋の記録」(ミケランジェロ・アントニオーニ)
•「白い酋長」「青春群像」「道」(フェデリコ・フェリーニ)等

・フィルム・ノワールのはしり「マルタの鷹」(ジョン・ヒューストン1942)発表 以後、「黒い罠」(オーソン・ウェルズ1958)まで
「拳銃貸します」(フランク・タトル1942)、「ローラ殺人事件」(オットー・プレミンジャー1944)、「飾り窓の女」(フリッツ・ラング1944)、「ギルダ」(チャールズ・ヴィダー1946)、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(テイ・ガーネット1946)、「殺人者」(ロバート・シオドマク1946)、「三つ数えろ」(ハワード・ホークス1946)、「過去を逃れて」(ジャック・ターナー1947)、「上海から来た女」(オーソン・ウェルズ1948)、「白熱」(ラオール・ウォルシュ1949)、「夜の人々」(ニコラス・レイ1949)、「アスファルト・ジャングル」(ジョン・ヒューストン1950)、「現金に体を張れ」(スタンリー・キューブリック1956)、「狩人の夜」(チャールズ・ロートン1955)、「キッスで殺せ」(ロバート・アルドリッチ1955)、「めまい」(アルフレッド・ヒッチコック1958)、「黒い罠」(オーソン・ウェルズ1958)に至る

・(12月25日)映画「キャット・ピープル」(ジャック・ターナー)公開
*関連映画「キャット・ピープルの呪い」(ロバート・ワイズ1944)、「キャット・ピープル」(ポール・シュレイダー1982)

・第19回キネマ旬報ベストワン「ハワイ・マレー沖海戦」(山本嘉次郎)、戦争の為日本映画のみ選出
・第15回アカデミー作品賞「ミニヴァー夫人」(ウィリアム・ワイラー)